移民政策学会趣旨

 人類社会はグローバルな規模での人の移動の時代に突入した。いまや出生国や国籍国を離れて生活する人々は数億人に達し、外国人労働者、家族、難民のほかにも、移民の多様な形態がみられるようになっている。

 こうして国境を越えた人の移動が激増するなかで、先進諸国を中心に入国管理の厳格化が進められ、難民の認定や庇護希望者の処遇はより厳しいものとなっている。また、専門的・技術的分野で就業する外国人の積極的導入が図られる一方で、入国管理法令上の在留期間や在留資格に合わない滞在者や就労者は原則として排除され、例外的に合法化が行われている。

 他方で、国際的な人権保障の進展とともに、移民の権利保障に取り組む国は増えている。しかし、国民国家内部に居住している移民に対する政策をみると、多文化主義政策の見直しが問題となっている伝統的な移民国家もあれば、文化的多様性を承認してきた統合政策を見直し、移民の社会的周縁化をいかに是正するかという視点から、公用語の習得を重要視するヨーロッパの移民国家などもみられるようになっている。

 こうした変化のなかで、日本においても、入国管理政策のあり方と同時に、国内に居住する外国人および民族的少数者に対する政策(多文化共生政策と呼ばれつつある)のあり方が本格的に問われる段階を迎えている。この間、日本では、体系的な政策理念がないまま外国人労働者を受け入れてきたため、数々の問題や矛盾が増大してきており、外国人の定住化とともに、在留資格の見直しや社会的・経済的・政治的参加、国籍や教育の問題も視野に入れた体系的な移民政策が求められるようになっている。

 しかし、日本では、移民政策に関する本格的な研究機関がないだけではなく、研究者と実践者との間に十分な情報の共有や交流・議論の場が構築されてきたとはいえない現実がある。また、移民政策は、人間の活動領域すべてに関わる広範なものであり、学際的、実証的な研究を必要とする。われわれはこうした現状認識に立ち、さまざまな学問分野の研究者のみならず、実践者とりわけ法律家や国際機関、NGO/NPOの活動者、さらに政策担当者などを含む、開かれたフォーラムとして「移民政策学会」を立ち上げ、互いの知識・情報・経験を共有し、それらをより有効に活用しあうことを目指したい。

(2008年4月11日現在)

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